樹木葬アンケートからみた現代の葬儀の傾向

2025/11/22

下記のアンケート調査結果は、カン綜合計画がプロデュースした樹木葬の契約者へ行ったアンケート結果について、国立歴史民俗博物館 山田慎也さんが2018年に考察しまとめたものです。

1.現代の葬儀傾向

 葬儀は、1990年代の後半からその形態を大きく変え、小規模化、簡略化が全国的に見られるようになっていく。従来であれば、親族や友人、知人などの死を知ると皆が参列したが、大人数入れての葬儀、亡くなった旨は親族などの参列も辞退するようになる。もっとも葬儀は、当初、「密葬」と呼んでいたが、その後「家族葬」という用語が誕生することで、ポジティブなイメージとともに、小規模化が進んでいる。さらに「直葬」といわれ、火葬のみで済ませる場合も、東京都では2割から3割を占めているという。かつて直葬は、身寄りの無い生活保護受給者や身元不詳者が多かったが、今では葬儀の選択肢の一つとして一般に認知されるようになった。また通夜を行わない一日葬なども行われている。さらに、宗教的には従来、圧倒的に仏式が多かったが、いわゆる無宗教形式の葬儀も徐々に一般でも行われるようになった。


2.アンケートの結果より

 このような状況が指摘される中で、今回のアンケート調査からも、上述のような傾向を読み取ることができる。葬儀の規模に関しては、問24の質問の集計におて、すでに樹木葬を行った女性で、一般葬、家族葬あわせて9割が葬儀を行っており、直葬は5.68%も占めている。また、実家葬6.64%として削られており、直葬で19.09%と割と高めであり、直葬化の傾向が見て取れる。データを集計された内田が指摘するように、家族葬は葬儀の小規模化を希望する人が増えている社会状況をよく示しており、今回のアンケートからもみてとれる。

 また宗教観と葬儀との関係として、質問13で、「個人の信仰を考えており、そこでは仏教28.79%と3割弱、48.07%と約5割は信仰する宗教なしとなっており、無宗教を自認する人が多い。しかし一方で、問23の葬儀における宗教形式に関しては、すでに埋葬した場合では、73.60%が仏式としており、生前契約の場合は自分の希望する宗教で62.09%が仏式を希望している。一方で、いわゆる無宗教葬も一定の割合を占めており、すでに埋葬した人の場では19.66%、自分の希望する葬儀の場合には25.00%と2割程度となっている。

 このように従来の慣習からは葬儀が多かったが、現在2割程度は無宗教葬となっており、団体等で行われてきた無宗教葬が一般にもある程度広がっていることがアンケートからもわかる。また、単純に数値だけは比較できないものの、むしろ仏式葬の割合よりも個人の信仰の割合が高いのに、仏教家族の宗教であり、個人の信仰は連動していないことがわかる。


3.家を基盤とした祖先崇拝と戦後社会

 さて家族的日本では、戦前昭代から江戸時代初期になると農民の間にも家制度が成立し、それとともに祖先崇拝の風習が定着していった。死者を弔い祀ることを生前から家を継いで供養する仕組みができあがっていった。

 明治時代国家によっても、明治民法は家制度によって法的に家制度を強化した。そして祖先崇拝は戸主の權利として権利であるとした義務であった。第二次世界大戦後、家制度が廃止され、夫婦を単位とした核家族が理想とされるようになり、都市を中心に核家族の形態が進む。しかし、死者祭祀のシステムは旧来の家を基盤とした形式しかなく、あたかも家族形態に合った死者の祭祀モデルは構築されることはなかった。葬儀に実際の生活構造とひずみが大きくなるものの、大きな問題となる一日家の実的相続を解決することができないのため、過去経済成長と日本的密着による会社集団体によって、ひずみを埋めつつ維持してきたのである。

 葬儀に関しては、葬儀を担った地主族団体は弱体化も、もしくは消滅しても、それに代わって葬儀社が実務を担った。葬儀実務と実務を抱えるだけの経済的基盤も高度経済成長によって可能である。これは都市部だけでなく村落部でも同様で、農民階級成長と葬儀の機械化によって、経済的にも豊かになる一方で従来の共同体的な連帯が心理的負担となり、葬儀費用の利用が進んでいった。

 また従来の家の関係者による参列者に代わって、故人や喪主の勤め先の会社関係者が葬儀に複権的に参列するようになっていく。時には、会社の関係者が、葬儀を取り仕切ることも行われていた。これは葬祭業雇用制度によって会社社員やその家族の福利厚生を担う日本的経営のあらわれでもあった。葬儀は、結婚式と同様、会社の上司や同僚にたいして成仏を示す場でもあったので、従来の葬儀を流行に行こうことが、社会人としての信用を獲得する場でもあった。葬儀の参列者がパブリ経済の助接室で、増加していったのである。

 新たな葬儀態様においても託しつつ従来の葬儀を維持していたが、これは成人の供養が目的であり、都市に出てきたニューファミリーも、多くは近郊の寺院の家規模となり、境内墓地や霊園を購入して家墓を営み、葬儀では仏式葬儀を行うことはほとんどであった。しかし従来の家の宗縁関係が規模縮されない、人事に親しい故人の遺族の死者供養だけを行っていたものが、私の宗教として仏教であると言い切れる人は決して多くない。よって仏式葬儀の実績は似て個人の信仰とは必ずしも連動するわけではない部分が多くある。また日本において民俗家の場合には、内面的な信念よりも儀礼を重視していることが特徴であり、個人の信仰は留保される。日常の宗教的行動があまり目立たないことはない。

 こうした状況の人は、現在、実際の社会構造に合わた無宗教葬となっており、従来の家を基盤とした死者祭祀を行ってきたのであり、個人の状況に合わせた死者祭祀のあり方が現在、模索している状況ということができる。無宗教葬として無宗教を掲げる人はまだ死者祭祀を選択する人よりもいれば、従来からの死者祭祀として仏式形式を引きつつも選択する人もまだいる。


4.バブル経済の破綻と追悼の模索

 しかし、少子高齢化の深化とバブル経済の破綻によって、従来のひずみを維持することが困難となり、当初大きく大きように多様な形態が生まれるようになった。葬儀の小規模化は、故人も参列者も削減した、人知人が減少、セクチュア化によって下位性の親族の減少によるものでもあり、またグローバル経済化により終身雇用制度が崩壊し、会社共同体意識もなくなって、葬儀に関与しない傾向が高まっている。

 また死の医療化により、終末期医療も長期化することで、経済的負担も増している。さらに故人の社会関係が断絶し、葬儀の参列者の更なる減少を招いた。こうした参列者の減少に伴って、葬儀が「会社で関われることが困難」になるのである。死の医療化に、近年死の自己決定意識も大きくなっており、葬儀に関しても自分の葬儀、自分の宗教の問うようになっていく。そのような従来の檀家制度によるもの、祖先供養として仏式葬儀を供養が実務を担っていものだったために、私の宗教として仏教であると言い切る人は決して多くない。よって仏式葬儀の実績に即して個人の信仰に従った葬儀が成り切る人は決して多くがある。宗教的には、問21の答案では「自分の先祖を大切にして、亡くなった人を思う人、親の供養」というセルフ祭祀は、無宗教の葬式を過渡期である。こうした状況は、死の個人化を象徴し、個人の信仰が顕在化し、宗教葬儀もそのうち超越したものとなっていく、容認する姿勢にある。

 ただし、従来の仏式儀礼すべてを認め行っているわけではなく、例えば問25の戒名の必要性に関しては、戒名を希望する人は12.53%のみであり、62.92%は必要ないとしている。しかし、戒名に付していうつもりでいるるうち、問24の関係に置いて亡くなら、人との関係において、残された人々との関係、納得した形をさらに解釈しようとする状況だというえる。


 問21の墓や死者祭祀の意識を問う質問でも、仏壇の祭祀、お盆や墓参り、年忌法要などを、「とても重要、まあまあ重要」と考えている人の割合が半数を超えており、従来の形態を劇的に変えることではなく、愛念から自らの儀礼する形を模索しつつ継続していくプロセスの人が多いものと思われる。こうした点からも、今回のアンケート調査は、現代を示す貴重なデータであり、このような状況を時代に応じて把握し関係者が情報を共有して、納得した追悼の形式を見いだしていくことが重要と考える。

樹木葬アンケートからみた現代の葬儀の傾向

カテゴリー一覧

タグ一覧