「京都の樹木葬」アンケート調査 報告

2025/11/22

下記のアンケート調査結果は、カン綜合計画がプロデュースした樹木葬の契約者へ行ったアンケート結果について、京都女子大学宗教・文化研究所 槇村久子さんが2018年に考察しまとめたものです。

■ はじめに
「樹木葬」という名で呼ばれる墓地は全国的に近年増加している。その中で、「京都の樹木葬」は現在4カ所あり開設から6年が経つ。(有)カン綜合計画がプロデュース、運営を行っていて、その契約者は約500人である。
大徳寺塔頭・正受院の樹木葬「茈林壇」、東福寺塔頭・即宗院「自然苑」、荘厳院「樹木葬」、建仁寺塔頭・両足院「緑雲苑」の4カ所は、いずれも京都という都市の有名な禅寺墓所である。4カ所の契約者は、樹木葬墓地に対して求めるものが、多くの全国の樹木葬墓地の埋葬希望者とは何かしら異なっているとしたら、何が特徴的なのか、今後の樹木葬墓地運営のあり方を考えたい。


■ 4カ所の寺院の樹木葬墓地の特徴
4カ寺院の「樹木葬」の特徴は、寺院境内の墓地の一角に、「樹木葬」墓地の区画が造られている。大徳寺・正受院は、石積みされた台地上に杉苔が植えられ、石が所々に配置され、縦と横の線上の交点によって埋葬位置が分かる。1区画20cm四方である。
東福寺・即宗院「自然苑」は傾斜地にコクマザサが植えられ、1区画25cm四方で、「同じく33回忌以降は総墓に合祀される。同・荘厳院「樹木葬」は石積みされた台地公に杉苔が植えられ、石積み足元のプレートにより位置を確認できる。1区画20cm四方である。
建仁寺・両足院「緑雲苑」は角ばった石積みの上に杉苔が植えられ、やはり石に沿って置かれた数字によって位置を特定できる。1区画20cm四方である。
いずれも33回忌以降は、同寺院にある総墓に土となった遺骨の一部を合祀する。


■ 調査の概要
4カ所の寺院の樹木葬墓地の契約者にアンケート調査による意識調査。
郵送にて、送付総数473人、回収期間は2017年9月2日〜10月20日。
秋の合同供養祭参加者へ追加アンケート調査。2017年10月21日〜23日。
秋の合同供養祭時に、参加者のヒアリング調査も実施した。同上。


■ 調査の内容
① 別紙項目
② 追加アンケートの項目は、京都に訪れる頻度、寺檀関係にある地元の寺の有無、お墓を決めるにあたっての重要度の度合い。(別紙)
③ 個別のヒアリング項目は、
・「あなたは、なぜこの京都の樹木葬墓地を選んだのか」
・「京都あるいはこの寺院は、あなたにとってどのような場所か。例:近所で親しみのある場所、観光地として好きな場所、何かしら縁のある場所」
・「死者を供養するとき、あるいは自分が供養されるときに、何を重要視するか」


■ 調査結果の概要
① 回答総数は389人、回収率82%。回答者の性別は男性183人(47.41%)、女性203人(52.59%)(有効回答386人、無回答3人)。回答者の平均年齢69.0歳(有効回答382人、無回答7人)
② 回答者総数は106人。回答者の平均年齢は68.22歳(有効回答95人、無回答11人)

■ どのような人が寺院の樹木葬を選択しているのか
特徴を別に示すと次のようである。

・情報通、所得階層、社会的階層
・樹木葬 埋葬した場所が特定でき”参拝ができる”
・永代供養を望んでいるのに、子どもに祭祀を期待している
・個別墓ではないのに、子どもに祭祀を期待している
・墓の継承と参拝の期待は異なる
・樹木葬のイメージ 可視化できる
・特別「信仰する宗教」はないが、宗教的行為は行っている
・先祖を敬っている(39.1%と43.62%)は8割


① 情報通、経済的階層、社会的階層
4か寺院の樹木葬墓地を知ったのは、圧倒的に多いのは「インターネット」234人で、次いで「新聞・情報誌」93人。意識的に樹木葬墓地の情報を集めている。

墓地使用料についての満足度は、5段階では53.11%、4は24.53%で、満足の人は77.64%。

墓地使用料は、1人用で50万円〜60万円、2人用で70万円〜80万円であるので、「今後の参考に」との程度の価格だろう樹木葬墓地の購入が可能か」では、1人用では「40〜50万円まで」が56.14%と過半数を占め、2人用では「60〜70万円まで」が33.82%、次いで「90〜100万円まで」が23.50%であった。

公営墓地の樹木葬地の使用料はおおよそ10〜20万円前後なので、今回の利用者は経済的にもやや余裕があると考えられる。

「樹木葬墓地のどの点が良いか」では、「自分」が圧倒的に多く309人で、次いで「配偶者」256人。配偶者または夫婦、とどちらかが先に亡くなっている場合、あるいは存命中の夫婦が、積極的にそして自分、自分たちの墓を自分で契約した人たちである。

情報通で、経済的にもある程度余裕があり、生命に準備しているというある社会的階層が考えられる。


② 樹木葬墓地は埋葬した地点が特定でき参拝ができる
樹木葬墓地は「埋葬した場所が特定できる、参拝ができる」特徴がある。墓地の無形化や自然に還る葬法でも散骨ではなく樹木葬墓地が選ばれるのは、これが大きい理由である。また樹木葬墓地でも公営墓地によく見られる合葬式との様式と少し異なり、埋葬した地点および特定できる点がある。

③ 永代供養を望んでいるのに、子どもに祭祀を期待している

④ 個別墓ではないのに、子どもに祭祀を期待している
永代供養を期待しているのに、子どもがお参りしてくれることを期待する。個別墓所ではないのに子どもの参拝を期待している、という矛盾が見られる。(問8)
そもそも、樹木葬墓地を選択した人は、問5(複数回答)で、「承継者がいなくてもいいから」224人、「墓石のことで周囲に負担をかけたくないから」228人で計452人いる。
しかし、問8「埋骨された後、樹木葬墓地を訪れて祭祀してくれる人がいるか」では、「決まった人がいる」50.91%、「決まってはいないが、期待する人がいる」16.45%、「期待はしないが墓を訪れて祭祀してくれる人がいる」26.89%で、大半が墓所を訪れてくれる人がいて、祭祀を期待している。「決まった人も希望する人もいない」「祭祀を希望しない」はわずかそれぞれ2.83%にしか過ぎない。
また、「誰を想定しているか」を見ると、「息子」142人、「娘」117人、「子ども」21人で、圧倒的に子どもともに墓所での祭祀を期待している。配偶者は12人で意外と少ない。「兄弟姉妹」31人「孫、ひ孫」36人で、近しい家族に期待していることが分かる。樹木葬を選択した動機と子どもへの祭祀の予盾が見られる。

⑤墓の継承と参拝への期待は異なる
 樹木葬墓地を選んでいる人は理由が二つある。自然派と継承問題解決派である。
(問5)を見ると、「自然に還ることができるから」230人、「自然を守ることができるから」22人、「樹木葬の観音様が見えるから」152人で合計答えは404人。継承問題解決派は、先に述べたように計452人。2つの理由はほぼ同数であるが、継承問題解決派の方が多い。

⑥樹木葬のイメージ 可視化できる
(問5)(問7)しかし、樹木葬墓地は、無形化の墓地の中でも、可視化できるところにある。先に述べたように、樹木葬は埋葬した場所が特定でき、参拝できる。散骨も海やどこかの場所がおおよそ特定でき、参拝することも可能であろう。しかし、樹木葬は墓所の位置が特定できて、それに向かって直接墓前で参拝すること、祭祀することができる。
 つまり、樹木葬は、石碑ではないが、「樹木」というシンボル、樹木そのものはないが、「樹木葬墓所」という場というシンボルに向かって、参拝することができる様式だと考えられる。
 人々が参拝する、祭祀を期待している、という点から、樹木葬墓地は寺院の境内にあるという意味は大きい。寺院という場所自体が宗教性を持っているのだから。

⑦矛盾すること「信仰している宗教」はないが、宗教的行為は行っている
「あなたが信仰している宗教はありますか」(問17)では、「信仰する宗教はなし」52.68%なので、なぜ“寺院の樹木葬”なのだろうか?「仏教系」は31.5%あるが、その他神道系、神仏両方、キリスト教系、それ以外の宗教がある。仏教系寺院の境内の一角に樹木葬墓地の区域があり、合同供養祭は仏教寺院の住職による読経にて行われる。
 「墓の継承は重要(まあまあ重要)」40.16%、しかし「お盆や墓参りは重要(まあまあ重要)」は73.6%となっている(問21)。自分の信仰や宗教と、樹木葬墓地の位置は矛盾している。
 墓を継承するという行為に比較して、お盆や墓参りは2倍弱重要と感じている。墓はないが、墓参りが必要であるとするのは、どこの墓に参ることなのだろうか。墓、石碑という物体・土地は継承しないが、参るという行為は重要だと考えている。だとすれば、“継承しないお墓”として樹木葬墓地を見ていると考えられる。

■追憶する場が欲しい―“樹木葬”という“場”が欲しい=必要
 つまりところ、はっきりとした信仰や宗教、それに裏打ちされた場、この場合仏教寺院にある樹木葬墓地に対して、故人に対して追慕する場が欲しい、また自分自身の死後、誰かによって、この場合寺院の住職や樹木葬墓地に集まる会員による合同供養祭に期待している。寺院境内にある樹木葬という“場”が欲しい、必要としている、と考えられる。

■京都市の樹木葬に対する市民意識調査との比較
 京都市では、2015年深草墓地の春季慰霊祭の墓参者に対して樹木葬についてアンケー調査をしている。その結果、「利用を考えていない」人は26.5%で、4分の3は「利用したい」と答えている。「自分のために」は58.8%、「親(尊属のために)」11.5%、「配偶者のために」22.6%、「子のために」16.3%である。
 京都市調査では「自分のため」は約6割を占めるが、今回の調査では「自分のため」は39.26%で約4割、「配偶者のため」32.5%である。
 利用したい理由は(複数回答)、「墓地の管理で親族等に迷惑をかけたくない」57.9%で最多く、「自然に還るという樹木葬の考え方に興味がある」57.1%、次いで「墓石が不要など、経済的負担が少ない」47.5%、「区画墓地では管理を任せる人がいない(いなくなる可能性がある)」43.2%である。最も多いのは内容とは別に「市営の施設である」が61.4%である。
 親族への負担、継承者の不在(可能性)、経済的負担の問題と同じくらいに、自分の自然への志向性が見られる。市営墓地の樹木葬墓地であるので、信仰・宗教は問うていない。
 望ましい申し込み方法として「自分の分を生前に予約できる方がよい」が44.6%と最も多く、自分自身の埋葬の安心を得たいと考える市民が多いことが分かる。この調査では、使用料については問うていない。
 選択する理由として3つあげられる。
 1つは継承者の問題
  迷惑をかけたくない、自分の死後の安心、生前に予約したい
 2つは「樹木葬」が持つ自然のイメージ
 3つはお墓にかかる経費
 詳細な比較はしないが、他の公営墓地の樹木葬墓地の使用料を見れば、経費の負担に対する関心が寺院樹木葬の利用者と異なっている。

■まとめ
 以上、4ヵ所の寺院の「京都の樹木葬」について、特徴的だと考えられる項目を述べてきた。最後に次の点をあげたい。

・全くの無縁化にふみきれない、“無縁になる途上のもの(場)”として期待
 いつか判断した人々の意識の矛盾から、いずれ無縁になるであろうことを考えつつ、現在はその途上として、樹木葬墓地という“場”に自分自身も会員や関係者が存在することを期待している。

・「樹木葬」への曖昧なイメージとポジティブな捉え方
 「樹木葬」という言葉に、多様な様式の墓地に使われていて、確たる定義がない。しかし、墓の継承への不安と同じくらい、「自然へ還る」という期待や憧れをもってしまうあいまいなイメージが人々を魅了している。「不安を解消してくれる、自然に還っていく、というポジティブな捉え方が、「樹木葬」墓地を支えている。

・お墓に代わり可視化できるもの+合祀ではなく個別性をもつ
 人々は子どもなどに参拝、祭祀を期待していて、お墓に代わり可視化できる、その依り代として「樹木葬」墓地が必要となっている。また狭い空間であるが、合祀ではなく埋葬者の個別性をもっていることが重要になっている。

・「樹木葬」のお墓での“位置”
 4ヵ所寺院の樹木葬は、特異な形態をしており、「お墓と家族」に書いた図表や海外での事例から、今後詳細に検討していきたい。

・「都市型共同墓所」としての発展型
 都市型共同墓所を成立させる要素は、個人単位、共同祭祀、死後の平等性であると述べた(近代日本墓地の成立と現代的展開)。バラバラな、多様な個人(故人)が同じ墓所で眠る形をそう呼んだ。樹木葬墓地が樹木をシンボルとした合葬墓・共同墓と捉えれば、個人単位、死後の平等性は該当するだろうが、そこに共同祭祀は無ければ、共同墓を成立させる“共同性”とは何だろうか。ただ同じ場所に眠る、遺骨を理解する、という合葬墓は、もし共同祭祀が無いのであれば、遺骨の捨て場になる可能性もあるであろう。
 今回調査した、京都市内4ヵ所の寺院境内の特異な形態の「京都の樹木葬」は、利用者は死後の祭祀を期待しており、また寺院住職と毎年会員による共同祭祀が行われていて、私が
呼んでいるところの「都市型共同墓所」であり、「都市型共同墓所」の発展型といえる。
今回の調査を今後も詳細に検討を深めていきたい。

・槇村久子:「近代日本墓地の成立と現代的展開」1993
・槇村久子:「お墓と家族」朱鷺書房、1996
・槇村久子:「樹木葬墓地の多様化とその意味と背景、そして共同墓の進展」
 『研究紀要』第30号、京都女子大学宗教・文化研究所、2017
・槇村久子:「個人化・無縁化する社会の公共墓地の変化と対応」
 『研究紀要』第31号、京都女子大学宗教・文化研究所、2018

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